歯ブラシを使っての指導の現場である診療室内では、様々な口腔内状況の方々がいらっしゃいます。

患者さん自身が健康を選択

歯磨き指導の難しさ

医院によってはマニュアルや決まり事があって、それに沿った歯磨き指導を行っているところもあるかもしれませんが、それでは全ての患者さんの口腔状態に対応するのは難しいと思います。なぜなら患者さんは、残存歯の状態や義歯やインプラントの有無、生活習慣など色々な要因から、一人ひとりの口腔内の状態が異なるからです。その事を理解したそれぞれの患者さんに適切なホームケアを指導していくことが大切と考えます。

幸いにも日本人は「歯磨き好き」といっても良いくらい、多くの人に「歯磨き」という習慣自体は定着しています。しかし、そのみがき方は、幼少期に集団指導されたみがき方でありことが大半で、その人に合ったみがき方ではありません。

長年のみがき方を個々にあったみがき方に変えるためには、「ここを磨いてください」という単純な指導よりも「どこに問題があって、どういう風にしたいのか」という理由から説明するなど、患者さんに自身の口腔内を理解してもらえるような指導が必要であると考えます。ほとんどの人が毎日歯みがきはしているので、要点さえ掴むことが出来ればその「歯みがき」を本当の意味での「セルフケア」にすることができるハズです。

適切なセルフケアを患者さんに定着させるために一番大切なのは、患者さん自身が『健康を「選択」』すること。自分の口腔内に関心を持ってもらって、どうしていくのかを決めてもらうことです。

しかし、患者さんは私たちが思っている以上に診療中の話を理解しておらず、アドバイスや指導が十分届かない場合もあります。患者さんに私たちの声を届けるには、我々指導する立場に人間がプロ意識を持つことが大切だと考えます。たとえ若くて経験が浅い歯科医や歯科衛生士でも、資格を持ったプロである以上、口腔ケアの専門職であるという意識を持って、患者さんに接することが大切と思います。

指導する者が歯科医でなく歯科衛生士であっても、患者さんに紹介するときは「○○先生です」と紹介し、口腔ケアを担当する「先生」であることを最初に認識してもらえば、患者さん側も教えてもらう姿勢になり、アドバイスや指導を聞き入れやすくなると思います。

ある日急にひらめいたように、それまで蓄積されてきた指導が理解できる日がきます。こつこつと時間をかけ、患者さんと二人三脚で進んでいくことが大切と考えています。


興味を持ってもらえるような指導